ソウルの都心部を流れる清渓川(チョンゲチョン)の復元プロジェクトが2年ぶりに完成し、今月1日、市民に公開された。清渓川は、1968年に高架道路が建設されたのに伴って川がコンクリートで覆われ、暗渠(あんきょ)になっていたが、高架道路を壊してコンクリートの蓋を取り外し、川を掘り起こして昔の姿を蘇らせた。
蘇った川には遊歩道がつくられ、岸辺には野草が生い茂り、魚や野鳥の姿もみられるようになった。チョウや赤トンボも姿を現し、かつての生態系が完全に戻った。川のおかげで、ヒートアイランド現象が緩和し、川周辺の気温は3度も下がったという。まさに都会のオアシスといえよう。
このような高架道路を撤去して河川を復活させた都市再開発事業は、世界でも前例がない。国際的に地球環境を守ろうという動きが盛んないま、ソウル市の取り組みは、快挙といえるだろう。
この清渓川復元プロジェクトの仕掛け人は、李明博・ソウル市長で、3年前の市長選に立候補した際に公約として掲げ、みごと実現した。李市長は、かつて現代建設の社長として建築業界で辣腕を振るった人物で、彼が市長にならなかったら、この事業はできなかったといわれている。また、地域の住民たちが工事に理解を示し、立ち退きなどに協力したことも成功の一因だ。総工費は約4000億ウォン、川の維持費に年間70億ウォンかかり、費用は膨大だが、都市と自然の融合を実現した功績は何事にも代え難い。
世界の都市でも環境整備を図ろうという動きが起きている。パリでは、数年前からセーヌ河畔に人工の砂浜をつくり、市民に開放しており、ボストンでは高速道路を撤去して、跡地を公園に代える計画を推進中だ。日本でも東京・日本橋の高架道路を撤去し、川を蘇らせる計画があるそうだが、清渓川が大いに参考になるだろう。東京の都心を流れる日本橋川などが再生されれば、東京の魅力が倍加すると思う。(N)