「黄金バァーット、どこ、どこ、どこから来たのか正義の味方」――1960年代後半に日本で放映されて一世を風靡したアニメ番組に「黄金バット」がある。中高年にとっては、この主題歌とともに懐かしい思い出だろう。実はこの「黄金バット」、同時期に韓国でも放映され、人気を博したことはあまり知られていない。しかも、日本で放映されたものは、韓国でつくられていたというから驚く。
最近、「まんが日本昔ばなし」などで知られる日本アニメ界の重鎮、森川信英さん(86)が、この史実を明らかにしてわかった。韓日国交正常化の65年、アニメの国産化をめざしていた韓国の東洋放送からアニメーターの養成依頼を受け、森川さんは単身、海峡を渡った。以後、3年余り、選抜された104人の有能な若者に基礎から技術を教え、アニメのイロハを徹底的にたたき込んだという。
当時、日本はアニメの興隆期で、制作費が高くなり、韓国でアニメーターを育て、安く制作して日本に逆輸入しようという日本側の意図もあった。こうして誕生したのが「黄金バット」と「妖怪人間ベム」の2本のアニメだったのである。当時、2作品とも両国で大ヒットしたが、反日感情に配慮して、韓国では監督した森川さんの名は伏せられ、日本でも韓国製アニメだったことは今日まで極秘にされてきた。
韓国ではいま、週900本のアニメが放映され、70を超える大学にアニメ学科が設置されるなど、アニメ全盛時代を迎えている。韓国アニメ界の巨匠・林ジョンギュさんやアニメCMの第一人者で湖西大学教授の李揆弘さん、人気マンガ家の金星斗さんら、多くの森川さんの教え子が第一線で活躍しており、一人の日本人が蒔いたタネは、着実に韓国の土壌に根付き、みごとに花開いた。
いまは「キャンディ・キャンディ」「マジンガーZ」などの日本製アニメが韓国で放映され、人気を呼んでいる。今度はぜひ、森川さんの弟子たちがつくった韓国アニメを日本で放映してほしい。(G)