韓日友情年に影を落としているのが歴史問題である。韓国、中国で起きた反日デモは、この問題の深刻さを浮き彫りにした。歴史問題の解決策の一つとして両国政府が取り組んできた歴史共同研究も、しばしば意見の対立が見られたという。
その歴史問題の壁を乗り越えようと、韓国・日本・中国の学者、教師約60人が共同編集した「未来をひらく歴史 東アジア3国の近現代史」(高文研刊)と題された歴史教材が、このほど3国で同時発売された。日本の「新しい歴史教科書をつくる会」の歴史偏向に対処するために、2002年に開催された「歴史認識と東アジアフォーラム」のメンバーが中心となって作成したものだ。
内容を見ると、日本の朝鮮半島や中国への侵略・残虐行為について、生存者へのインタビューなどを交えて詳細に記述する一方、日中両国で反戦運動に取り組んだ長谷川テル、反戦の思いを抱きながら死んでいった学徒兵など、日本の反戦運動の状況も紹介して、歴史を客観的に捉えようとする努力がうかがえる。
日本の教科書で削除が続いている「従軍慰安婦」問題や、在日コリアンの人権問題にきちんと触れているのも特徴的だ。これには日本側メンバーに加わった在日コリアンの女性学者2人の力が大きかったという。
平和を願う学者たちの間でも、それぞれが受けてきた歴史教育、歴史観の違いから、作業には困難を伴ったという。しかし、「子どもたちに真実の歴史を伝えたい」との共通した思いで、3年の年月をかけて発刊にこぎつけた。お互いが信頼関係を持って取り組めば合意できることを、この教材が証明したといえる。
韓中日が歴史問題を解決することは、FTAの締結、今後の東アジアの平和に向けて大きな課題である。一日も早い政府レベルの取り組みを期待したい。(L)