今月8日、東京・新宿の東京オペラシティーコンサートホールは、感動の渦に包まれ、鳴りやまぬ拍手が延々と続いた。会場に詰めかけた日本人や韓国人、そして、その他の国々の人々約1600人の聴衆が、思いを一つにし「韓日友好」を願った。韓日国交正常化40周年を記念する「日韓出会いのコンサート・梯剛之&金叡智~盲目の天才ピアニストの競演」でのことである。
金叡智(キム・イェジ)さんは小学生のときに失明、梯剛之(かけはし・たけし)さんも、小児がんのために生後1カ月で光を失った。こういった肉体的ハンデを乗り越えて、二人は国際舞台で活躍、障害者などの弱者に勇気を与え続ける活動を展開している。今回のコンサートは、昨年11月に金さんが梯さんを招待し、ソウルで行った演奏会の返礼として実現したもので、華麗な演奏で聴衆を魅了した。
金さんは、グリーグのピアノ協奏曲を弾いたが、凛(りん)とした北欧の清廉さと、ロマンティシズムを感じさせる演奏で、この曲の魅力をさらに引き出した。梯さんはベートーベンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」を披露したが、まさに威風堂々たる演奏ぶりで、威厳に満ち、絶品だった。
しかし、聴衆を感動させたのは二人のすばらしい演奏だけではなかった。二人が聴衆に向かって直接メッセージを伝えたのである。金さんは、「私たちは文化や国境を乗り越えて、韓日両国の和解の懸け橋になりたい」とあいさつ。梯さんも、「日韓がもっともっと仲良くなれたらいいし、そのお手伝いをしたい」と述べると、会場からひときわ大きな拍手が沸き起こった。
クラシックのコンサートで、演奏者があいさつすることは異例のことで、二人の思いがひしひしと伝わった。二人のことばは、両国国民の願いを代弁したものといっていいだろう。生涯忘れられないコンサートになった。(G)