高校生のころ、米カンザスシティーの女性と文通したことがある。互いの文化の違いや習慣の違いに驚き、手紙を通じた異文化体験は新鮮だった。しかし、受験勉強などで忙しくなり、文通は2年足らずで途絶えた。交流を続けるということは誠に難しい。
ところが、韓国・忠清南道保寧市に住む金明基さん(68)と九州の宮崎市に住む岩元ヒデ子さん(58)は、40年以上も文通を続けているというから驚きである。
きっかけは、NHKラジオ国際放送で日本語を学んでいた金さんが、同局に文通相手を探してほしいと依頼したことで、高校のペンフレンドクラブに所属していた岩元さんを紹介された。63年から文通が始まり、韓日間を行き交った手紙は千通を超える。
このように長い期間続いた文通は奇跡といってもよく、世界でもめずらしいだろう。
文通開始当時は、韓日間に国交もなく、日本に出す手紙は検閲もあって大変だったそうだ。二人は、趣味や日常生活のことなどを報告し合い、多感な青春時代の悩みも打ち明けたという。それぞれが家庭を持ち、音信が途絶えた時期もあったが、家族の理解もあって今日まで文通が続いている。
岩元さんは、子育ての苦労や家庭の悩みまで、何でも書いた。二人の文通が続いたのは、互いに心を開いて、何でも腹蔵なく話し合い、信頼関係を築いてきた結果だと思う。こういう個人レベルでの交流が国交前から続いていることを喜びたい。
とかく韓日関係は、過去の歴史に引きずられて波風の立つことが多い。昨年は、「韓日友情年」で国民レベルでの交流が活発に行われた半面、独島(竹島)問題や小泉首相の靖国参拝で政治的には両国の関係が冷え切った。このような時こそ、金さんと岩元さんの文通のような、庶民レベルでの交流を続け、韓日関係を盤石にしていくことが大事ではないかと思う。(G)