バングラデシュは、1人当たりGDP(国内総生産)が韓国の40分の1にすぎない世界最貧国のひとつである。そんな国で貧者だけが借りられる世界最初のマイクロ・クレジット(少額無担保融資)を始め、600万人以上を貧困から救い出したグラミン銀行とその創設者ムハマド・ユヌス総裁に今年のノーベル平和賞が授与された。本当に価値ある人・機関が受賞したことで、ノーベル平和賞はこれまで以上に光り輝くと思う。
「信用貸しこそ基本的人権」を信条に低利で貸し付けた。返済率は98%に及び、いまでは全国に200以上の支店網を擁するバングラでも有数の銀行に成長した。しかも経営は黒字だ。このグラミン銀行方式は現在、世界60カ国に広がっている。貧しい人たち、特に農村女性に再起の機会を与え、「貧者が借金を返済できるはずがない」という固定観念を覆した奇跡の銀行である。
韓国では、「貧者のための銀行」の活動が始まってまだ日が浅い。最初は6年前にグラミン銀行が投資した「得意になる組合」。2003年には約200の市民団体が支援して社会連帯銀行が発足した。だが、まだ社会運動のレベルにすぎない。グラミン銀行のように貧者のための専門的な金融機関になるためには、より積極的な取り組みが必要だろう。韓国では日本以上に格差問題が深刻であり、生計費に満たない底辺層が人口の1割を占めているという現実を看過できないからだ。
ユヌス総裁は「慈善では人を救えない。それぞれが責任を果たしつつ、経済的に成功を収めることが貧困解消につながる」と語っている。グラミン銀行は、未来を信じ、新しい世界に変えられるのだということを示してくれた。社会的弱者である貧者には、そんなチャンスの道が用意されていることが大切である。(S)