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2006/09/22

<鳳仙花>◆在日朝鮮学校生の国体初参加◆

 プロ野球ソフトバンクの監督で病気療養中の王貞治さんが早稲田実業時代の57年、甲子園の優勝投手となりながら、外国籍を理由に第12回国体に出場できなかったのは有名な話である。早稲田実業は、1回戦で9対4で敗退。王さんはダグアウト横で、じっと試合を見ていたという。

 その後も静岡商業の新浦壽夫投手(韓国名・金日融)が甲子園大会で準優勝しながら、韓国籍を理由に国体参加が認められないなど、在日のスポーツ選手が排除されてきた例は数限りなくある。日本で生まれ育ち日々練習に汗を流しながら、ある日突然、大会から排除された若者達の気持ちは推して知るべしだ。

 国体は81年から一部規約を改正し、現在は一条校(学校教育法第1条に定める学校)に在籍または卒業した外国籍者(永住者)の出場を認めている。しかし、各種学校に分類される朝鮮学校やインターナショナルスクールへの門戸開放が決まったのは昨年のことで、30日に兵庫県で開かれる「のじぎく(県花)国体」から初参加する。

 46年に始まった国体は、60周年という節目を今年迎える。日本人のスポーツ振興のために始まった国体だが、日本の国際化、外国籍者の増加に伴って出場規定の見直しを求める声は、以前から高まっていた。高校総合体育大会(インターハイ)への朝鮮学校生の参加が94年に認められたことを考えると、遅すぎた感は否めないが、ともあれ朝鮮学校生が平等に出場できることは喜ばしい。

 今大会にはボクシング、競泳、バレーボール、ウエイトリフティングの4種目に朝鮮学校生が出場する。特にボクシングではインターハイ3位の大阪朝鮮高級学校3年生、金在鴻君が出る。初参加で優勝を勝ち取れば、後輩たちへの大きな励みになるだろう。また開会式には神戸朝鮮学校生の民族舞踊も披露されるという。多民族共生社会へ向け、今国体が着実な一歩となることを期待したい。(L)