積水ハウス(大阪市北区)に勤務する在日2世の徐文平(ソムンピョン)さん(46)が、顧客にハングル名の入った名刺を出した所、「お前は朝鮮総連のスパイだろ」「社名とハングル名を一緒に書くとはケンカを売っているのか」など差別発言を受けたことに抗議して、慰謝料300万円と謝罪広告を求めて客を提訴してから3週間が経った。
その徐さんは、「なんで在日なんかに生まれたのか。キムチの赤い色も汚く見えた。チマ・チョゴリもみじめな存在にしか見えなかった」というほど、自己否定の子ども時代を過ごしたという。そんな徐さんが、本名宣言をしたのは中学3年生のとき。在日の歴史を学び、同胞の友人が出来る中で、本名を名乗ることを決意したという。
70年代に盛り上がった人権運動の中で、日本の学校に通う在日の生徒たちに歴史を教え、本名を名乗らせる”民族学級”の活動が、同胞が多数居住する関西地域で盛んになった。
多くの在日の子ども達が、悩みながらも、自尊心を取り戻すために本名宣言をしたが、徐さんもそんな子どもたちの一人だったのだろう。
学校で本名を名乗っても、職場に出ると日本式通名を使う人が多い中、徐さんは本名で仕事をこなしてきた。積水ハウス入社後、名刺に漢字とハングルの両方を入れたのも、在日コリアンであることを明らかにして仕事がしたかったからだという。
積水ハウスは企業の社会的責任として、徐さんへの全面支援を約束している。裁判費用を負担し、裁判への出席も勤務時間と認めるという。
同社や徐さんの元には、「私もこんな企業で働きたい」と励ましの声が寄せられる一方、「(日本企業が)朝鮮人の味方をするのか」などの嫌がらせもあるというが、がんばって支援を続けてほしい。「在日が普通に本名で仕事も生活もできる社会を」との、徐さんの願いに沿う判決を期待したいものだ。(L)