地下鉄の豊洲駅周辺(東京・江東区)は高層マンションの建設ラッシュだ。有名女優や人気プロ野球選手がCM出演したマンションの看板も目立つ。地価も上昇し、ミニバブルを呈していると近隣の住民は話す。
その豊洲駅から15分ほど歩くと、現在小学生65人が学んでいる東京朝鮮第二初級学校(枝川朝鮮学校)にたどりつく。この周辺だけが再開発から取り残された印象だ。この学校に東京都から土地明け渡し訴訟が起こされ、2年半を迎えようとしている。
ここは東京都が所有する土地だが、72年に90年まで学校用地として使用できる無償貸与契約を結んだ。当時の美濃部都知事が、在日の子どもたちの民族教育を保障するためと、学校の財政難を考慮して下した決断だった。覚書には、90年の時点で学校が継続していたら協議し善処するとの内容が盛り込まれている。
その覚書に沿って90年以降、東京都と学校側の交渉が2003年7月まで続いてきた。ところが同年12月、都側は90年以降の土地使用料などとして約4億円と土地明け渡しを求めて裁判を起こした。
「交渉にきちんと対応しないので、裁判を起こさざるを得なかった」という都側の言い分に、学校関係者は、「交渉が突然打ちきられた。民族教育への弾圧ではないか」として、学校を守るべく動き出した。日本人の学者や弁護士による支援団体が出来、裁判闘争が始まった。韓国のテレビ局も取材に訪れている。
枝川に朝鮮人密集地が出来たのは1941年。粗末なバラックの共同住宅を建て、開発予定地に住んでいた朝鮮人をここに強制移住させたのである。その人たちが1946年1月、自力で設立したのがこの枝川朝鮮学校だ。
歴史的経緯、そして、民族教育を本来保護すべき行政の立場からも、都側に配慮があってもよかったのではないだろうか。裁判はこれから本格化する。円満解決を期待しつつ注視し続けたい。(L)