日本政府がアジアの人材を広く養成する「アジア人財基金」の設立に向けて動き出した。二階俊博・経済産業相が提唱したもので、小泉首相も了承、外務省など関係省庁との協議を経て、今月中にも具体的プランを打ち出す。
経済産業省の試案によると、年間200億円規模の予算を計上し、韓国、中国などアジア各国で選抜試験を実施、来年から700人を受け入れる。アジアの頭脳を結集して先端技術の研究開発を進めるのがねらいで、画期的な試みといえるだろう。しかも、学生、社会人を問わず募集し、一人月額30万円の奨学金を支給するというから、生活の心配をせずに、研究に専念できる。
ただ残念なのは、期間を3年に限定していることで、これではどれだけの成果が上がるか疑問だ。こういった人材交流プログラムは、学問や研究成果はもとより、国と国との垣根を取り払い、相互理解を助けるというメリットがある。そのためには、継続していくことが何よりも大事だと思う。
国際的な人的交流プランとして名高い米国の「フルブライト奨学金」は、故J・ウイリアム・フルブライト元上院議員が「世界平和を達成するには人物の交流が最も有効だ」と議会にはたらきかけて実現した。1946年にスタートしたフルブライト計画は、今日まで世界140カ国、約25万人に相手国での研究や教育の機会を提供し、社会のリーダーを育成する役割を果たしてきた。日本人の参加者も約6000人を数え、その恩恵は計り知れない。
「アジア人財基金」もフルブライトを手本に息の長い活動をめざしてほしい。日本だけでなく、韓国と手を組み、アジアのリーダーを育成するようなプログラムにしてはどうか。21世紀はアジアの時代といわれながら、経済格差は大きく、先進国の韓日が協力して途上国を支援していくことが、今後のアジアの発展につながると思う。(G)