栄枯盛衰。果てしなき競争が続く産業界も同様であり、世界の自動車地図をみれば、今日の姿を誰が予想しただろうか。
1990年代の日本企業ダメ論が幅を利かせる中、格付けを落とされたことがあるトヨタが今年、生産台数900万台を突破、長年世界一の生産を誇っていた米国のGM(ゼネラル・モーターズ)を抜く見通しだ。逆にGMは政府支援が必要とされるほどの苦境にある。時代の流れは急速だ。
韓国車は奇跡に近い急成長をとげた。販売台数は昨年500万台を突破、米国など現地工場での生産も本格化しており、韓国車はもはや世界ブランドである。その国内トップメーカーの現代自動車は、世界5大メーカー入りを目標にするまでになった。自動車産業が産声をあげてわずか50年、韓国経済を牽引する一大産業に発展していることに今昔の感がある。
さらに中国の存在だ。合弁メーカーが多い中国車は昨年国内販売が日本に次ぐ世界第3位の572万台を記録した。今年初めの北米国際自動車ショーには初めて国産車を登場させた。1980年代に小型乗用車「ポニー」の対米輸出を契機に躍進を遂げた韓国の例が思い起こされる。
10年後には世界の自動車地図はどう変わっているだろうか。決め手はやはり技術革新だと思う。韓国で2010年をめどに商用化を進めている燃料電池車はその重要な挑戦だ。ガソリンに代わる水素タンクを搭載して最長300㌔まで走るテスト走行を成功させたが、先行する日本メーカーとの差はまだ大きい。
トヨタとGMの地位逆転は日本車のような環境対応型の省エネルギー技術を開発できたかどうかにあった。油断は禁物である。このようなことも「他山の石」として、技術革新に取り組んでほしい。(S)