韓国西岸の忠清南道泰安の沖合約8㌔の黄海上で7日朝、香港船籍のタンカー(14万6000㌧)とタグボートを曳航中のクレーン付き台船が衝突し、原油約1万500㌔㍑が流出するという事故が発生した。韓国での油流出事故としては過去最大規模で、大きな被害が懸念されている。事故は当事国だけの問題ではなく、周辺の海洋国に深刻な影響を及ぼす。このため、国際社会が一斉に韓国に調査団を派遣するなど、協力に乗り出した。
日本政府もマット型油吸着剤(3000万円相当)を提供するとともに、油防除の専門家で構成した国際緊急援助隊を韓国に派遣し、油除去作業に力を尽くしている。このような隣国への援助は、両国関係にとってプラスにはたらくと歓迎したい。
思い起こせば10年前、福井県三国町沖で油流出事故が起きた。このときは、国際社会の協力とボランティア30万人が油除去に参加し、わずか2カ月半で原状回復に成功した。これは、阪神大震災のときのボランティア活動の経験が生かされたためだといわれている。約半年後に隣接する有名な観光地の東尋坊を訪れたが、クリーンな海が蘇っていて油流出事故がうそのようだった。
日本には技術の蓄積とこのような経験がある。これを韓国でも生かしてほしい。今回の援助隊の派遣は国際緊急援助法に基づくものだが、この法律は途上国が対象で、韓国は含まれない。今回は人道的観点と隣国への友好を考慮したものだというが、これをいつでも援助できる態勢にしてはどうか。油流出のような大きな事故は一刻を争う。時間が経てば油汚染は広範囲に広がり、被害も甚大になる。今回も、国際社会が動いたのは、事故発生から1週間や10日後で、これでは遅い。せめて韓日は、緊急災害援助協定のようなものを結び、相手国で災害が発生した場合に、すぐに支援できる体制をつくってはどうだろう。(A)