韓国人は詩を愛する民族といわれている。ノーベル文学賞候補にもなった高銀さんなど、世界的な詩人も輩出している。その韓国で歴史上最も愛されている詩人の一人に、「抵抗詩人」「民族詩人」として有名な尹東柱がいる。
日帝時代に生まれた尹東柱は、ソウルの延禧専門学校(現在の延世大学校)を経て京都の同志社大学に留学していたが、独立運動に関与したとして1943年7月、治安維持法違反容疑で逮捕され、祖国解放を見ることなく45年2月16日、福岡刑務所で獄死した。毒殺、衰弱死、人体実験に利用されたなど死因にはいくつかの説があるが、真相はいまだ不明のままである。
「死ぬ日まで天(そら)をあおぎ/一点の恥ずることなきを/(中略)そしてわたしに与えられた道を/歩みゆかねば」と詠まれた詩は、韓国の学校教科書に掲載され、だれもがそらんずるほどだ。
尹東柱の詩は日本でもファンが多く、詩集「天と風と星と詩」は日本でも翻訳され、同志社大学には95年に詩碑が建てられている。
尹東柱は逮捕前に京都の宇治川のほとりをよく散策していた。それを知った宇治市民有志が「詩人尹東柱記念碑建立委員会」(紺谷延子事務局長)を組織し、募金運動を開始。現在まで日韓有志による550万円が集まっている。
「記憶と和解」のシンボルとして、このほど石碑が完成した。幅1・4㍍、奥行き1㍍、高さ2・1㍍。韓国の石と九州の石を使った2つの石碑を並列した形にすることで、両国の友好をアピールしている。尹東柱の遺族からは碑に刻む「新しい道」の詩も寄せられている。
しかし、石碑はできたが残念なことに地権者との交渉が難航、土地がまだ決まっていない。
尹東柱の美しい詩と崇高な精神を偲び、不幸な歴史を繰り返さないことを誓うための石碑である。一日も早く建立が実現することを願いたい。(L)