最近、北京経由で北朝鮮を訪問したジャーナリストの田原総一朗氏が、テレビの番組で「以前訪朝したときは小型の航空機だったが、今回はジャンボ機で白人の乗客が沢山いた」ということを述べていた。そんなに多くの欧米人が訪朝する目的は何なのか、と興味を引かれたが、それから数日後に北朝鮮はレアメタル(希少金属)の隠れた産地であり、それに世界の注目が集まっているとの報道があった。それで合点がいった。核問題の解決が近いという判断のもと、北朝鮮のレアメタル争奪戦が始まったのではないか、と。
北朝鮮といえば核やミサイルが連想されるが、実は「鉱物資源大国」という別の顔がある。特に、マグネサイト、タングステン、モリブデン、インジウム、ニッケル、クロム、ボーキサイトなどレアメタル埋蔵量は世界10指に入る。それもほとんどが未開発状態で、宝の持ち腐れといった状態だ。これに目をつけない手はないというわけだ。
日本の植民地時代にレアメタルの埋蔵が確認されていたが、今みたいに需要がないため本格的な開発がなされなかった。近年に入り、需要が急増、原油並みに国際価格が急騰しているのは、レアメタルがハイテク産業に欠かせないからで、北朝鮮はその残された有望産地である。例えば、自動車や電子部品を軽量化する原材料として需要が急増しているマグネサイトは、世界1の埋蔵量(40億㌧)を誇る。半導体に欠かせないタングステンの埋蔵量は、世界2位だ。金や銀の埋蔵量も相当量にのぼる。
北朝鮮の資源開発では中国が先行しているが、欧州でも英国やオランダがファンドを組み、投資を始めた。
北朝鮮にとって、国際価格が急騰しているいまこそ、レアメタル資源を武器に経済再建を図る千載一遇のチャンスではないか。石油資源を武器に未来都市建設に邁進する中東のドバイやカタールに倣うことができるかも知れない。先の南北共同宣言で「資源開発の積極的推進」に合意しているが、海外から投資を呼び込むための環境づくりが極めて大事な時だと考える。(S)