参議院選挙投票日が7月29日に決まり、立候補者も出揃った。民主党比例区から立候補する在日2世の金ジョンオク(政玉)さん(52)が、白眞勲・民主党議員に続き在日コリアンとして2人目の当選を果たすか、注目される。
金さんは下関出身。ポリオの後遺症で幼い頃から車椅子生活となった。88年東京に転居し、福祉工場に勤めた。在日、そして障害者であること、この2つが金さんの人生に重くのしかかったという。
多くの在日コリアンがそうであったように、思春期の頃から本名と日本名、自らのアイデンティティーについて悩み続けた。日本名を使って求職活動をしたり、公営住宅を申し込むなど「隠す」ことから解放されるため、本名を使うようになった。
国籍差別、障害者差別の撤廃運動に携わった。特に在日外国人障害者の無年金問題に取り組み、93年葛飾区に要望書を提出。「特別給付金」の実施を関東で初めて受けた。この運動も、当事者として様々な壁を感じたことがきっかけだった。
在日外国人も障害者も、求めるのは「保護」ではなく「権利」であり、「当事者の声を反映させること」。これが金さんを支える理念になっている。
過去、八代英太議員が障害者の立場で様々な法案成立に尽力したことがある。当事者としての具体的な意見が、多くの議員の心をつかんだのが法案成立につながったが、金さんの場合も同じような効果が期待できるのではないだろうか。
白議員とあわせて2人の在日議員が誕生すれば、相乗効果も期待できるだろう。
もう一つ、民族名で日本国籍を取得し立候補することで、「安心して民族名を名乗れる社会」の重要さを、日本社会、在日社会にアピールしたいとも話している。
厳しい戦いが予想される選挙戦だが、「当事者の声」を国会に届けるため、奮闘を期待したい。(L)