在日コリアンを主人公にした映画『パッチギ!LOVE&PEACE』(井筒和幸監督)が公開中だ。2005年に公開され大ヒットした『パッチギ!』の続編である。
前作の公開時には、「パッチギ」(頭突き)という言葉の意味が話題になった。60-70年代の朝鮮学校生と日本の高校生の乱闘騒ぎの中で、よく使われた言葉だが、井筒監督はそれを逆手に取り、「パッチギ」という言葉を映画のタイトルにした。そして、日本には在日コリアンが存在し民族差別を受けてきたこと、日本人と在日の間にある壁を”乗り越え”、共生していこうと訴えたのである。
公開後、監督のもとには「日本に在日と呼ばれる人たちがいることを知らなかった」「彼らのことをもっと知りたい」などの声が多数寄せられたという。
今作では70年代を舞台に、2、3世が本名を隠して生活せざるを得ない現実や、植民地時代の1世の苦難を描き、在日の抱えてきた苦難を日本の観客に示した。同作に対しても、「在日の歴史を勉強できた」「パッチギをテーマに卒論を書いてみたい」「芸能界に在日の人が多いことを初めて知った」などの感想が、若者を中心に寄せられている。
「展開が荒削りだ」「多くの事柄を詰め込みすぎたため散漫になった」などの批評もあるが、井筒監督が日本の若者たちに在日の歴史を知らせ、在日に対しての親近感を持たせたことは高く評価したい。
この間、『GO』『夜を賭けて』『血と骨』など、在日をテーマにした映画が何本か作られているが、大多数の日本人にとって在日はいまだに見えない存在といえる。
井筒監督は、「歴史を知ることが共生の第一歩」と語り、戦後の混乱期を在日がどう生きてきたかを次の研究テーマにあげている。ぜひそれを描いてもらい、共生社会実現の一助にもしてほしい。(L)