元従軍慰安婦が初めて名乗り出たのは91年12月。金学順さん(当時67歳)だ。
「日本は二度と戦争をしないでほしい。過去の歴史を次の世代に知らせてほしい」。記者会見で涙ながらに語った金学順さんの姿は、今も忘れられない。
それから16年。この間、多くの国で元従軍慰安婦が名乗り出た。韓国では判明しているだけで215人いるが、みな高齢となり、金学順さんら100人以上がすでにこの世を去った。日本政府はこれまで、国家としての個人補償は否定し、「償い金」を渡す形で収拾を図ろうとしたが、謝罪と補償抜きで解決しようとすることへの反発は強く、受け取りを拒否する元従軍慰安婦も多かった。
反発はアジア諸国だけではない。当時オランダ領のインドネシアを日本軍が占領したとき、オランダ人女性多数を従軍慰安婦にする非人道的行為を行い、オランダの反日感情を高めた。
米下院で1月末、従軍慰安婦問題で日本政府の公式謝罪を求める決議案が提出され、2月中旬には米議会初となる元慰安婦を招いて公聴会も行われた。韓国、オランダの元従軍慰安婦が証言し、「日本は私たちが死ぬのを待っているのだろうが、(謝罪まで)死なない」などと語ったという。
安倍首相は「(旧日本軍の)強制性を裏付ける証拠はなかったのは事実だ」などと発言して、韓国、中国、台湾などから強い抗議を受けている。いま行うべきは「従軍慰安婦は旧日本軍が関与した」とする93年の河野(河野洋平現衆議院議長・当時官房長官)談話をしっかり継承することではないだろうか。
6日付ニューヨークタイムズも、「安倍首相ら日本の政治家が過去の過ちを克服するために最初に行うべきことは、過去の過ちを認めることを悟ること。そして率直に謝罪し、被害者に公的な賠償をすべきだ」と忠告している。その言に耳を傾けてほしい。(L)