韓国と日本の歴史認識のミゾを埋めようと、両国の歴史学者や大学教授が10年がかりで取り組んできた「韓日共通の歴史教材づくり」が実を結び、3月1日、韓日で同時出版された。日本では、「日韓交流の歴史」(明石書店、A5判464㌻、2800円)、韓国では「韓日歴史共通教材」(図書出版ヘアン)のタイトルで高校生向け副読本として書店に並ぶ。
この教材は、ソウル市立大学と東京学芸大学の歴史研究者らが議論を重ね、共同で執筆したもので、先史から現代までを網羅している。韓日共通の教材は前例がなく、両国の歴史認識の共有化に向けた第一歩と評価したい。
歴史は、自国に都合のいいように記述される嫌いがあり、自国の「恥」や「悪行」は隠蔽されてきた。このため、時に歴史が領土問題などと同等に国際紛争の火種となり、関係を悪化させてきたことは、過去の「教科書問題」にみられる韓日関係を振り返れば、明瞭であろう。
戦後に設立された国連教育科学文化機関(ユネスコ)は、「互いに相手国の歴史教科書について議論すべきだ」と提案、これを受けて「負の歴史」を持つドイツがポーランド、フランスなどと共同教科書委員会を立ち上げ、歴史認識の共有化を図っている。
今回の教材は、すべての項目について徹底的に討論し、どちらにも偏らない記述を心がけたという。例えば「秀吉の朝鮮出兵」については、秀吉一人の責任ではないとの見方から「日本の朝鮮侵略」と表記し、「韓日併合」については合法か非合法化かの判断をあえて避けた。また、日本で知られていない申采浩ら独立運動家を多数取り上げ、植民地支配を批判した吉野作造、石橋湛山らも紹介している。
このような教材は、両国の歴史研究に大きな刺激となるだろう。歴史認識の違いは相互不信を生み、真の交流を妨げる。この教材は、高校生向けだが、両国の教師や社会人にもぜひ読んでほしい。(G)