日本人と韓国・朝鮮人の相互理解と共生をめざし、神奈川県川崎市が「川崎市ふれあい館」(川崎区桜本)を設立して20周年を迎えた。これを祝って9月27日、桜本小学校体育館で記念行事や祝賀イベントを開く。ぜひ、多くの人に参加してほしいと思う。
この間、ふれあい館は、子どもからお年寄りまで、地域の在日コリアンと日本人との交流の場として利用され、韓国文化の紹介や人権講座、ハングル講座などを行い、「多文化共生」の実現に大きな役割を果たしてきた。その功績は大きなものがある。
現在、川崎市には112カ国、約2万6000人の外国人が住んでおり、そのうち韓国・朝鮮籍が約9200人と最も多い。ふれあい館の設置をきっかけに、川崎市は外国人の施策に力を注ぎ、市の一般職職員の国籍条項を撤廃したり、外国人市民代表者会議を設置して外国人の声を市政に反映するなど、さまざまな取り組みを実施してきた。その原点は、「在日問題」だった。
川崎市は京浜工業地帯の中枢に位置し、戦前から日本鋼管、昭和電工、日本冶金などの工場が林立し、多くの韓国人が徴用され、そこで働かされた。解放後、行き場がなく川崎に定着し、在日コリアン密集地ができたのである。在日は貧困と差別に喘ぎ、地域社会から阻害されていた。それを変えようと、故・李仁夏牧師らが中心となって人権運動を展開し、日立就職差別、川崎信用金庫の融資差別と闘い、指紋押捺拒否などの抗議活動を繰り広げた。これに心を痛めた当時の伊藤三郎市長が、在日と日本人の共生施設の建設を約束し、ふれあい館が誕生。これによって川崎は、在日への差別をなくし、外国人との共生をめざす自治体に生まれ変わった。
いま、日本は急速に国際化が進み、外国人との共生が避けられなくなっている。しかし、全国に公設の共生施設は少ない。第2、第3の「ふれあい館」の誕生に期待したい。(G)