男子サッカー日本代表に選ばれた李忠成選手(リ・タダナリ、22、FW、柏レイソル)が、NHKテレビのインタビューで「北京で得点したい」と語ったのを見て、時代の変化を感じた在日は多いだろう。
日本代表を目指した在日韓国人選手というと、女子バレーボールのエースとしてモントリオール五輪(76年)で金を獲得した白井貴子選手が有名だ。シドニー五輪(2000)でも、新体操団体の中田真美選手が五輪出場を果たしている。彼女らは日本国籍取得と同時に日本名に変え、白井選手は在日を隠していたし、中田選手も公言はしなかった。帰化するときは日本名に変えなければならず、ましてや五輪選手が韓国系であることなど公には出来なかった時代だった。それを思い出すと、隔世の感がある。
李忠成選手は在日4世。反町代表監督が能力を高く評価し、李選手自身も「日本で生まれた自分にとって日本代表は夢」と、昨年2月に日本国籍を取得して代表入り。昨年11月の五輪最終予選ベトナム戦では2得点をあげ、一躍注目される存在となった。
そしてもう一人、本名で日本代表を目指している在日がいる。男子テコンドーの李裕鎮選手(イ・ユジン、27)だ。在日3世で、龍谷大学在学時から各大会で優勝を重ね、五輪日本代表を目指して日本国籍を取得した。テコンドーは現在男子の出場枠がないが、特別枠を確保できた場合には有力候補とされており、3月ごろまでには結果が出る予定だ。
2人は本名で日本国籍を取得することで、「民族と国籍は別」という考え方をはっきりと示した。李忠成選手は「帰化した自分が切符を勝ち取ったのは、自分にとっても、在日にとっても、日本にとっても誇り」と述べた。李裕鎮選手も、「(帰化しても)本名を変えるつもりはなかった。(五輪で)韓国人選手と対戦したい」と語る。
五輪の重圧をはねのけ、世界最高の舞台での2人の健闘を期待したい。(L)