学校側から学年副主任の要請を受けていた神戸市立中学校の教員、在日3世の韓裕治さん(43)が、外国籍であることを理由に教育委員会から人事を撤回されたのは不当として先月末、日本弁護士連合会に人権救済を申し立てた。全国の弁護士71人が代理人として韓さんを支援するという。
93年、神戸市の外国籍教員第1号として常勤講師に採用された韓さんだが、採用に至るには紆余曲折があった。「教員の受験資格は日本国籍を有する者」と定められていたが、世論の批判を受け、91年1月の韓日覚書で、外国籍者の公立学校教員採用試験の受験が認められた。そして兵庫県が92年に外国籍3人、神戸市はその翌年、韓さんの採用を決めたのである。
しかし、91年3月に文部省(当時)が、「日本国籍を有しないものの採用は、常勤講師に限り可能」との通達を出していたため、将来管理職に登用される正教諭にはなれなかった。そのため、韓さんも常勤講師のままだが、勤務態度、生徒への接し方などが高く評価され、前任校で3年、同校でも2007年と副主任をまかされた。それが昨年4月、再度の副主任要請を受けた後、教育委員会から拒否されたのである。韓さんが納得できないのは当然だろう。
韓さんは大学卒業まで日本名で生活、在日であることをずっと隠し続けていた。大学卒業後も日本名のまま時間講師として高校に勤めたが、1年後に本名に変えた。「在日の子どもたちに向き合うためにも、いまのままではいけない」と決心したのだという。韓さんの影響を受け、「私も韓先生と同じ在日」と名乗った生徒も、これまで何人もいるという。日本人生徒が在日や人権の問題を考える上でも、韓さんの存在は大きい。
日本社会で在日は永年、就職差別に苦しめられた。現在は壁が大きく取り払われたが、昇進の壁がまだ残っている。韓さんを副主任に採用することは、日本の国際化と人権教育に貢献するはず。善処を期待したい。(L)