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2009/03/13

<鳳仙花>◆東アジア漢字文化圏の復興◆

 日本は麻生首相のおかげなのか、ちょっとした漢字ブームだ。書店には漢字本のコーナーができ、テレビでは漢字の読み書きや四文字熟語の実力を試す番組が人気を呼んでいる。ハングル全盛の韓国でも、漢字が大企業の就職試験に出題されるケースが増え、漢字の検定試験への受験者が増加している。全国漢字教育促進総連合会という団体が「漢字教育を小学校の正規科目にしてほしい」と建議した。建議書には歴代総理経験者20人が署名している。注目すべき動きだ。

 建議書は「半世紀もの間、ハングル文字だけを使うという間違った文字政策により、現在の韓国人の文化生活は、アジア通貨危機より危うい文化的危機に直面している」と訴えている。韓国では現在、小学校でも校長の裁量で漢字を教えることは可能であり、漢字能力を身につけた生徒たちも出ている。このような漢字復活の動きは、漢字を使っている日本や中国との交流が増える中、漢字の理解力が求められていることも背景にある。「漢字の読み書きができれば、ビジネスにも有利になる」(駐日商社員)からだ。

 だが、漢字復活はそう簡単でもない。金大中政権時代に政府の公文書と道路表示板などへの「漢字併用」が打ち出されたが、勢いを得ることができなかった。ハングル論者ら根強い反対があるからだ。

 東アジアは漢字文化圏であり、漢字を使った筆談も可能だった。漢字文化圏内の言語はいずれも漢文から発達したため、語彙は漢字由来のものが多い。韓国語も語彙の7割は漢文に起源があるとされる。韓国、日本、中国、台湾の学者たちが91年、各国で異なる漢字の字体を統一しようと「国際漢字学術会議」を結成。5000字ほどの「標準字」を定める試みもなされた。

 韓国でも80年代まで新聞は漢字とハングル混用だった。名前をハングルで表記した場合の「チョン」が、鄭なのか全、丁いや田かと困ることもなかった。漢字併用について賛否の論議はあるが、東アジア共通の文字を捨て去るのはいかにも惜しい。漢字復活は一考の価値があると思う。(S)