「女たちの戦争と平和資料館」(東京・早稲田)という小さな展示館がある。朝日新聞記者だった故松井やよりさんが設立を計画、松井さんががんで亡くなった後、遺志を継いだ女性たちが2005年に開館した。現在、韓国・中国の元「従軍慰安婦」の証言をパネルで再現した展示が行われていて、写真からその悲痛な叫びが伝わってくる。
「従軍慰安婦」問題は、1991年に金学順さん(故人)が沈黙を破って初めて名乗り出たことで国際問題化し、その後、韓国だけでなく中国、オランダ、フィリピンなど次々と被害者が証言し、謝罪と補償を求める裁判が起きた。
それから18年。裁判は「個人請求権は認められない」として9件が敗訴した(1件が係争中)。しかし、敗訴はしたものの、被害事実の認定や立法化についての言及などの付帯判決が一部で付いたことは注目を引いた。日本政府はアジア女性基金をつくり、被害者に「償い金」を渡すことで解決を図ろうとしたが、「謝罪と補償」を求める被害者の受け取り拒否も少なくなかった。基金は2007年3月に解散。その後、日本政府の動きは無い。
いま解決の場は、司法から国会に移っている。日本の国会では2002年以降、野党議員から「戦時性的強制被害者問題解決促進法案」が、これまで9回国会に提出されたが、ほとんど審議もされずに廃案となった。しかし戦後補償問題で立法化を求める声は国際的にも強い。昨年秋には国連から解決勧告が出され、韓国国会も日本の謝罪と賠償を求める2度目の決議を行った。台湾、オランダ、カナダ、米国上・下院もこれまでに勧告決議を出した。日本では「在日の戦傷者」「朝鮮人BC級戦犯」などの裁判でも、立法化を求める判決が出ている。戦後64年。戦争の傷跡はいまだ癒えていない。被害者は高齢化が進み、次々と亡くなっている。鎮魂の声を伝えるためにも、早期の立法解決を期待したい。(L)