ここから本文です

2009/07/31

<鳳仙花>◆在日の存在感示した日韓演劇祭◆

 韓国と日本の演出家協会が主催し、都内で1カ月にわたって開かれた日韓演劇フェスティバルには、延べ7000人が集まった。

 韓国の戯曲を日本の演劇人が、日本の戯曲を韓国の演劇人が芝居にするという刺激的な試みが行われ、そこに在日韓国人の演出家・俳優が加わることで、創造的な舞台をいくつも作り上げた。中でも『壁の中の妖精』は、半世紀を超えた南北分断の悲劇を、一家族の姿を通して伝えた力作で、終演後は拍手が鳴り止まなかった。

 在日と韓日の演劇人が一つになって作り上げた舞台では、在日劇作家の鄭義信(チョン・ウィシン)作・演出による『焼肉ドラゴン』が昨年、大変な評判を呼んだ。在日のバイタリティーあふれる生き様を伝え、両国市民の共感を得て韓日で主要演劇賞を受賞している。日韓演劇フェスティバルの最終日、在日若手演劇人によるシンポジウムのタイトルを、「チャンソリ~これからの日韓」と主催者に提案したのは、その鄭義信さんだった。

 シンポでは、在日3世の若手劇団主宰者から、「(韓日どちらにも)同質性と異質性を感じてきた」と在日の視点を大切にした芝居作りが強調された。また、「韓国と日本の演劇交流に在日が加わり、三角形の形が出来たら、交流が幅広くなり発展するのではないか」との在日3世の女優の発言は、会場から大きな共感を集めた。

 韓国の著名な演出家である孫ジンチェクさんは、「在日韓国人が置かれた特殊な立場は、韓国でも知る人が少ない」と語った上で、「演劇とは人を見つめ、人を愛するものだ。演劇を通して地球家族になれると確信する」と強調したが、その通りだろう。

 主催者は、2年後に第2回開催を検討しているという。今回は韓日の戯曲が中心だったが、次回はぜひ在日作家の作品中心に上演し、在日の存在感を示してほしい。それが韓日の文化発展にもつながると思う。(L)