「昔は東京大学には貧乏人の子弟が多く入学したが、今では親が金持ちでないと入り難くなった」といわれて久しい。これは受験競争の過熱で、多くの教育費を投入できる家庭の子供が有利になっている結果であり、スタート時点から差がついてしまった現実がある。韓国も同様で、受験熱は世界有数だ。小学校から海外留学させる家庭も増えており、現在米国留学生で一番多いのは韓国人だ。だが、光と影というか、十分な教育機会が得られていない低所得層の子供たちの存在もある。このような教育格差を是正すべく、民間で始まった「ウィ スタート(We Start)運動」が広がりをみせている。注目すべき運動だ。
この運動は低所得層の子供に福祉と教育の機会を提供し、貧困を受け継がせないことを目的に2004年5月に始まった。塾通いのできない低所得層の小学生の勉強を手助けしたり、就学前の児童の読み書きを教えたりしている。社会の呼応も得て、昨年には厳しい経済環境の中でも、「1004(韓国語でチョンサと発音。天使と同音)ウオンを寄付する呼びかけに、幼い小学生からタクシー運転手、食堂の主人、がん闘病中の患者に至るまで多くの人が手を差し伸べ、募金額は8億ウオンを超えた。
06年9月からこの運動の広報大使を務めている人気女性歌手、パダは「父が長い間、病気だったため生活が貧しかった。ところが顔も分からない方が聖堂を通じて奨学金を下さり、高校まで無事に終えることができました。もしそのとき助けを借りることがなかったら今の私はいなかったでしょう。社会から受けた恩を必ず返したい」と語っている。
彼女の言葉にあるように、誰もが夢と希望を持てる社会にするため、スタートラインの不平等をできる限り小さくすべきだろう。そのためには教育しかない。現在この運動の拠点は20に達し、政府も年間3億ウオンの予算をつけているが、さらに広げてほしい。生まれたときの経済的不平等をそのまま固定化する社会に発展はないと思う。(S)