玄界灘を挟んで釜山市と福岡市の間で経済的な結びつきが深まっている。両市は20年以上にわたる行政・文化協力の積み重ねで信頼関係を築いてきており、08年10月には「超広域経済圏形成」に向けた共同宣言文を採択、その後数多くの協議を経て23事業・64件の課題を確定した。この国境を超えた新たな経済圏づくりの試みは、今年から一つひとつ具体化していく見通しだが、韓日関係の未来像を探る上でも注目したい動きだ。
この超広域経済圏構想は、最終的には釜山、蔚山など韓国南東部と福岡など九州7地域を合わせた経済共同体を建設しようというものだ。その礎をつくるため①ビジネス協力②人材の育成③自由往来④両国政府に制度改善要請などに取り組む。例えば両地域の空港と港、観光地、デパートなどで使える電子マネーの発行や共通の教科書副教本の使用などの事業も進める。この2都市は主要産業に類似性があり、相互補完的関係に進めば自動車部品 やIT(情報技術)、環境デザイン、映画・映像などの産業で相乗効果も期待されている。
釜山と九州北部は古より交流・交易が行われており、玄界灘はその海の道だが、いまではフェリーで3時間でいける。この海峡を越えて結びついた韓国人夫と日本人妻との悲恋を描いたNHKドラマ「海峡」が07年に放送され話題を呼んだことがある。視聴者から「国境を超えた一つの地域というのは、歴史的実在であると感じた」との感想が寄せられたが、ここには韓日の深い歴史が点綴されているといって過言でないだろう。
韓日はすでにビザなしで年間500万人近くが行き来する深い関係になっている。今後、両国が協力して創造的で高度な文化を作り出せば、素晴らしい時代を切り開けるに違いない。玄界灘を挟んだ両地域で始まった、国境と海峡を越えた地域協力をその羅針盤とみたい。もう過去に足を引っ張られている時ではないだろう。(S)