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2010/03/26

<鳳仙花>◆招かれざる「黄砂」対策◆

 各地で桜の開花宣言が発表される中、招かれざる春の使者が降り注いでいる。中国内陸部のゴビ砂漠などから強い偏西風に運ばれてきた「黄砂」だ。日本でも北海道から九州にかけて広範囲で観測され、関東でも洗濯物や車に砂が付着、喉や鼻の調子が悪くなるという人も多いだろう。

 中国から距離的に近い韓国の被害は特に深刻だ。韓国では先週末、全土に黄砂警報が発令され、観測以来最悪の数値を記録し、ソウルも街中が黄色く染まった。航空機の欠航や農作物への被害、精密機器への影響も出ている。呼吸器疾患など健康への影響も懸念され、休校になる学校が出るなど、年中行事とはいえ、年々ひどくなっており、対策が急がれる。

 黄砂のような砂塵の大規模な発生は、世界各地で砂漠のある所なら昔から起こっていたが、黄砂自体は有害物質ではない。海に落ちた黄砂の炭酸カルシウム成分がプランクトンの餌となり、太平洋が好漁場となっているなど、黄砂による砂塵の運搬が、自然環境の中で重要な役割を果たしているとも指摘されている。

 黄砂が問題となったのは、10数年前から。くしくも中国の急速な経済発展と軌を一にしている。偏西風に乗って中国の工業地帯上空を通過している間に、ダイオキシンなどの大気汚染物質を吸着し、川下となる韓国や日本に飛来する頃には健康に悪影響を与える有害物質へと変質してしまったのだ。

 韓日中は、1999年から3カ国による環境相会議を開き、対策を協議しているが、根本的な解決策を見出すのは容易なことではない。砂漠地帯での植林や防風林づくりといった事業の推進なども検討されているが、積極的に進めてほしい。黄砂は国境を越えた地球規模の環境問題でもあり、一国の被害にとどまらない。韓日中の全面的協力が不可欠だ。どんな解決策を導き出すのか、英知を結集させてほしい。(K)