韓国は「ソウル共和国」といわれるほど全てがソウルに集中しており、人口も全国の4分の1を占める。これを首都圏に広げると、全人口のほぼ半分が密集する過密ぶりで、何度となく人口分散策が講じられてきたが、見るべき成果をあげていない。ソウル一極集中を是正するには、地方都市を育成するしかないのだが、最近訪れる機会があった韓国南部の昌原市はそんな政府の政策が結実した数少ない例かも知れない。
昌原は釜山から車で西に1時間ほどのところにあり、清楚な町並みが印象的だ。聞いてみると、ここは韓国有数の生活水準の高い都市で、1975年に25平方㌔㍍の巨大な昌原機械工業団地が造成されてから大きく変貌したというのだ。国主導で計画的な都市づくりが行われ、72年に4万人程度だった市の人口は50万人を突破。昌原工業団地を中心に機械、金属、電子、自動車生産などの工場が立ち並び、国内外から2000以上の企業が進出している。このような経済基盤を土台に福祉水準も高いという。
昌原はまた「環境の街」でもある。昨年「第1回自転車祝典」が開かれたが、自動車専用道路比率が全国一で、いつでも、どこでも自転車に乗っていける公営自転車システムが導入されている。現在、全長3114㌔に及ぶ全国一周専用自転車道路の建設が進められているが、昌原はそのモデル地域である。
地方都市育成には何が必要なのか。地方都市が発達したドイツの例も参考になる。「ドイツの地方都市はなぜ元気なのか」(学芸出版)で著者の高松平蔵氏は、バイエルン州にあるエアレンゲンという人口10万人の小都市を例に、市民の独立意識が高く、経済も文化も充実し、福祉や教育といった全てが揃っていると、「自足」の重要性を指摘している。小さくともこんな街づくりが必要なのだろう。
韓国ではいま、南海岸開発に総額24兆ウォンを投じる地域発展プロジェクトをはじめ大々的な国土開発計画を進めている。これを機会に、昌原のような特徴のある豊かな地方都市をどんどん誕生させてほしい。(S)