文化センターアリラン(埼玉県川口市)が、東京・新大久保への移転に向けて準備を進めている。やはり民間で運営されている高麗博物館と同じビルに入ることになり、6月26日オープンに決定した。
ビルのオーナーである韓国人実業家が同館の存在意義を理解し、家賃は無償で負担してくれることになったが、移転費用と維持費の多額な経費が必要で、関係者が募金活動を展開しているが、目標額にはほど遠く、更なる協力を呼びかけている。
同センターは、「祖国の言葉も文化も知らない中途半端な存在に苦悩し、ルーツを追い求めた」在日2世の故朴載日(パク・ジェイル)さんが、8年の歳月と2億5000万円以上の借金を抱えて92年11月に開館した。韓国の歴史と文化を、在日と日本人に正しく伝え、韓日友好に寄与しようと、講座や文化事業などを行い、これまで約3万冊の蔵書を集めた。しかし、朴さんが2年前に亡くなってからは、財政難に抗しきれず、遺族が閉鎖を検討していた。
その朴載日さんと志を同じくした盟友に、歴史学者の故朴慶植(パク・キョンシク)さんがいた。在日の歴史資料の収集と保存、そして在日同胞歴史資料館の建設に生涯をかけたが、98年に交通事故で亡くなり、約6万点もの膨大な資料は、遺族の手を離れ、大学の研究室などに渡った。
他にも、京都で強制連行の歴史を伝えるべく丹波マンガン記念館を運営した在日1世の李貞鎬(イ・ジョンホ)さんがいたが、その遺志を継いで運営していた遺族も、やはり資金難で昨年閉鎖に追い込まれている。在日の歴史を伝える場が、相次いで運営難に追い込まれるのは、本当に残念なことだ。
現在、在日の歴史や文化を伝える施設は数カ所あるが、どれも規模が小さい。在日の力を結集して、真に誇れる施設を作り、そこに朴載日さんや朴慶植さん、李貞鎬さんらの収集した資料を集めることはできないだろうか。(L)