ここから本文です

2010/07/02

<鳳仙花>◆在韓被爆者の遺族が問う訴訟◆

 被爆者援護法の適用を受けられず亡くなった在韓被爆者の遺族が、日本の弁護士や市民団体の支援を受けて、広島地裁と長崎地裁に10月までに損害賠償請求訴訟を起こす準備を進めている。

 被爆者一人当たり100万円を請求するものだが、金額よりも、「受けられるべき援護を受けられなかった在外被爆者の苦しみを遺族が引き継ぐ」ことで、戦後65年経っても被爆者問題が解決しなかった理由を問いたいという。

 被爆者援護法は、被爆者への無償医療や、肝機能障害などの後遺症に対し健康管理手当ての支給を行うものだ。韓国人被爆者に対しても適用すべきとの世論が高まり、1974年にやっと適用が認められたが、旧厚生省通達により海外居住者は適用対象外とされた。そのため韓国に帰国した被爆者は対象外となってしまった。

 日本の植民地支配の結果、生じた被爆者に対して、非人道的な通達との声が高まり、「在韓被爆者から手帳の申請を求める訴訟が相次いだ。裁判は勝訴し、2003年に旧厚生省通達は廃止された。そして援護の枠外に長期間放置されたことに対する賠償金支払いを求め、韓国、米国、ブラジルなどの在外被爆者が協力して2年前から訴訟を起こしている。原告人数は約3000人にものぼり、一人当たり約110万円を支払う方向で、各地裁でこの間、和解が成立している。10月に予定される訴訟は、その流れに沿ったもので、相続権を持つ約220人の遺族が提訴する。

 広島、長崎で被爆した韓国人は約7万人といわれる(被爆直後に4万人が死亡)。戦後、その多くが厳しい生活にさいなまれた。祖国に戻っても、被爆者とわかると子どもが差別を受けると恐れ、被爆の事実を隠し続けた人、被爆者手帳の交付を待ちわびたまま、病院で亡くなった人もいる。あまりにも遅すぎた裁判ではあるが、遺族の声に改めて耳を傾け、未来への警鐘としたいものだ。(L)