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2010/08/06

<鳳仙花>◆世界遺産になった韓国の歴史村◆

 慶尚北道の安東市の河回(ハフェ)村と慶州市の良洞(ヤンドン)村が世界遺産に登録された。儒教を理念にした有形無形の文化と伝統をそっくりそのまま保存・継承してきた韓国を代表する歴史村だ。ユネスコ韓国委員会の田宅秀(チョン・テクス)事務総長は「韓国の伝統的な儒教教育システムを世界に知らせる契機になる」と語ったが、伝統家屋だけでなく儒教の伝統といった無形の文化を保存したことが両村の価値を高めたようだ。

 この2つの村は朝鮮時代の儒教に基づく伝統的な氏族集落の中でも最も長い歴史を持ち、河回は600年、良洞は500年に及ぶとされる。氏族集落は、長子相続を基盤として同じ姓氏を持つ血縁集団が代々集まって住む村のことだが、河回村は豊山柳氏、良洞村は月城孫氏、驪江(ヨガン)李氏が集まって生活した。同じ血族集団の人々がこれだけ長きにわたり暮らしてきた両班(ヤンバン)の村は他になく、また多くの戦乱を経ながらも両村とも原形を保っているのは奇跡に近い。

 ともかく、村全体が文化遺産の宝庫であり、格式高い居住空間、祠堂、あずまや、書院など歴史的に価値の高い家屋が軒を連ね、タイムスリップ感も味わえる場所だ。「河回別神クッ仮面踊り」など無形文化遺産にも注目すべきものが多く、国宝級の文献資料も豊富だ。河回村にある柳成竜の「懲毖(チンビ)録」(国宝132号)は、壬辰倭乱(文禄・慶長の役)前後の状況について記録した貴重な資料であり、良洞村の金属活字本「通鑑続編」(国宝283号)は、印刷術の研究にとって重要な資料だ。村の原形保存だけでなく、先人が残した精神的遺産を守る責任もありそうだ。

 河回村は英国のエリザベス女王が訪問したことをきっかけに、世界的なVIPの訪問コースとして有名になった。良洞村も各国の放送局から取材が相次ぐなど世界的にも人気を集めている。世界遺産になったことで観光客も増えるだろう。築数百年の古屋敷で一晩過ごし、伝統文化と伝統料理を体験すれば、村の人々が継承してきた精神的価値を感じることができるかも知れない。一度は訪れて、古の歴史に触れてみたいものだ。(S)