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2010/09/17

<鳳仙花>◆韓国社会の異変―未来への警鐘◆

 日本で自殺者が12年連続で3万人を超え、大きな社会問題になっているが、韓国でも昨年の自殺者が1万5413人を記録、過去最高となった。人口比では韓国は日本以上の自殺大国だ。自殺は心の問題であるが、元来韓国では自殺する風潮はなかっただけに憂慮すべき事態である。

 特に心配なのは小中高生の自殺者が増えていることで、昨年は飛び降り自殺などで202人が死んだ。そのうちの23人が成績不振が原因だった。ある調査によると、小中高生1000人のうち、半数近い475人が自殺を考えたことがあると回答。248人は成績についての悩みを挙げていた。激しい受験ストレスがあることを示している。

 異変は学校だけではない。企業では鬱病が広がり出しているといわれ、大企業の役員の13%は鬱病にかかっているとの調査結果もある。過去に鬱病に罹患した人も含めると4人に1人になる。子弟教育のため家族を海外に送り、本人は一人で生活することを余儀なくされているケースも少なくない。会社でのストレスと家庭の空洞化という厳しい現実も背景にありそうだ。

 現在、豊かさの尺度は所得の多寡だろう。だが、幸せは金銭とは比例していない。英国のシンクタンク「新経済財団」が昨年143カ国・地域の幸福度について調査した結果が興味深い。これは、人々が感じている人生の満足度に加え、環境に対する度合いや国への期待度を数値として換算したもので、1位は中米の小国コスタリカだった。5位にはベトナムが入っている。韓国は68位、日本は75位だ。コスタリカは軍隊をもたず、軍事費よりも教育や自然保護にお金をかける国で、他の幸福度指数でも上位にランクされている。

 韓国はいま公正社会の実現を掲げ、各種政策を打ち出している。最近の外交通商部の縁故採用問題で青瓦台(大統領府)が異例の徹底調査を命じたのも、不公正を放置できない現実があるからだろう。社会の異変は未来への警鐘である。この面での先輩国、日本とも協力して問題解決に取り組んでほしい。(S)