韓国の次期広島総領事に辛亨根さん(シン・ヒョングン、57)=現中国・瀋陽総領事=が内定した。早ければ3月にも赴任する。
辛享根さんは広島で被爆し、韓国原爆被爆者協会会長として長年補償運動の先頭に立った辛泳洙(シン・ヨンス)さんの長男で、被爆2世になる。被爆地・広島の総領事に被爆2世が勤務するのは初めてであり、韓日友好の懸け橋的存在になれることを期待したい。
辛亨根さんは、韓国人被爆者のために生涯を捧げた父の姿を見て育った。泳洙さんは被爆で顔の左半分が焼けただれた。左耳がなくなるほどだった。
さらに原爆後遺症による体調不良に一生悩まされ続けたが、「お化けのようになった私よりも、もっと悲惨な原爆症に悩まされている人が韓国にはたくさんいる」と常々語り、子供たちには「人類と大義のため、そして人権・人道を大切に人生を生きろ」と教え諭したという。
亨根さんは長男として父の活動を手助けする一方、日本の被爆2世との交流も深めてきた。74年に父が日本国外に住む外国人として、初めて被爆者健康手帳の交付を受けた時は、家族みんなで涙を流した。78年に韓国外務部(当時)への入部が決まると、父は誇らしげに送り出してくれたという。
亨根さんは外交官になった後、中国勤務を長く続けた。最近では中国に進出した韓国企業に対し、雇用条件を改善して中国・朝鮮族出身の優秀人材の雇用を確保するよう進出企業の努力を促し、朝鮮族の若者たちから感謝されたという。
広島そして長崎には、泳洙さんを支えた日本人支援者が数多くいる。亨根さんは、「父は日本政府の対応には怒りを示したが、日本の支援者にはいつも感謝していた」と話している。
父の遺志を受け継ぎ、被爆者の人権確保、そして反核・平和を求める声を、韓日協力しつつ訴えていってほしい。(L)