地球温暖化対策が叫ばれて久しい。国際社会はこの間、様々な対策を講じてきたが、その中で、地球温暖化の主要原因である温室効果ガスを削減するための排出権取引制度が「世界標準」として注目されている。「グリーン先導国」をめざす韓国でも法整備が始まったが、国際競争力の低下が避けられないとする産業界の反発を受け、やや腰砕けの恐れが出てきた。
韓国は08年8月に「低炭素グリーン成長」を新たな国家ビジョンと位置づけ、10年1月にその実現方法を規定した「低炭素グリーン成長基本法」を制定した。この法律に基づき「温室効果ガス排出取引制度に関する法律」を立法予告、13年1月から実施をめざした。ところが経済界・産業界からの陳情を受けて、政府は実施時期を15年へと2年先延ばしにし、1㌧100万ウォン以下の排出超過分に対する課徴金も引き下げる法案修正に着手した。だが、今度は環境団体がこれに強く反発、3月に上程される国会審議は難航しそうだ。
この排出権制度は、各企業に対して温室効果ガス排出許容量を定め、その上限を超える量を排出すれば、市場から排出分を買い取らせることで、排出量の抑制をめざす制度だ。逆に基準値より少なく排出した企業は余裕分を売ることができ、全体としては低コストで排出削減が可能となると期待されている。
対象企業はCO2(二酸化炭素)を年間2万5000㌧以上排出する468社。鉄鋼や石油化学などの大量排出企業にとっては大きな負担となる。製造業全体で6兆ウォン以上の負担が生じるとの試算もある。だが、韓国のエネルギー効率は日本や欧米先進国よりはるかに低い。排出権制度ができれば、より低コストを求め、新技術の開発競争が促される効果もある。
李明博大統領は09年11月の閣議で、温室効果ガスを20年までに30%削減する総量削減目標を確定、国際社会に約束した。グリーン成長の先導国をめざすなら、この約束を後退させてほしくない。早期導入こそが「グリーン先導国」の役割ではないだろうか。(S)