福島第1原子力発電所の事故を受けて、静岡県の浜岡原発にあるすべての原子炉の運転停止が決まった。大規模な東海地震が起こる可能性が高いとして、運転停止を求めた日本政府の要請を中部電力が受け入れたのは当然だろう。日本に劣らず原発依存が高い韓国も1兆ウォン(約754億円)を投じて、原発の安全性を強化することを決めた。この間の原発被害の惨状をみれば、安全第一を考えるのは常識だろう。
韓国の安全性強化対策は、21基の全原発に対するこの間の検査結果をもとに決められた。①5年計画で50の長短期安全対策を実施する②非常発電機が作動しない場合も想定し、可動式の非常発電機を各原発に1台ずつ確保する③原子炉内の核燃料が損傷し大規模水素が発生する最悪の事態も想定、水素爆発を防ぐため、電源の要らない最新型の水素除去施設を全原発に設置するなどの内容だ。だが、これで十分だろうか。
先日、東北地域を回ったが、福島県の郡山市に入ると、友人のガイガーカウンターの放射線数値が急に高くなった。東京では0・1マイクロシーベルト台だったのが、0・39~3・1に達した。郡山は福島第1原発から50㌔も離れているが、2カ月になるのに数値は高いままだ。いま福島では原発周辺の10万人以上が住み慣れた土地を追われ、途方に暮れ、空気や水、土壌の汚染にもおびえている。
核戦争後の放射能汚染の恐怖を淡々と描いた「渚にて」という名画を思い出した。核戦争ではないが、原発事故も一度起これば、もう取り返しがつかない悲劇が待っていることが今回の事故ではっきりした。今回は地震・津波だったが、テロ攻撃や航空機の墜落によるシステム破壊も「想定外」とはいえない。
いま世界では約30カ国で原発が稼動しており、新たに建設を進めている国もある。いますぐ原発を停止することはできないとすれば、安全性強化を徹底するほかない。来年3月にソウルで核安全保障サミットが開かれるが、人類の重大課題として対策を講じるべきだろう。(S)