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2011/06/03

<鳳仙花>◆韓国に戻ってくる朝鮮王室儀軌◆

 色鮮やかな宮中の人物絵巻を見て、改めて朝鮮王朝の歴史に思いをはせた人も多かっただろう。韓国民の念願であった朝鮮王室儀軌の日本からの返還が、韓日図書協定による文書引き渡しという形で決定した。早ければ今秋にも韓国に89年ぶりに戻ってくる。

 朝鮮王室儀軌とは、朝鮮時代の国家主要行事を文章や絵画で記録した文書類の総称。朝鮮王朝は、王室の結婚式や国葬、冊封、築城などの主要行事を「儀軌」と名付けて、文章と絵画を用いて詳細に記録していた。当時を知る貴重な歴史資料である。

 この朝鮮王朝の公式記録は3万3900冊からなるが、そのうちの81種167冊が朝鮮総督府によって日本に持ち出され、宮内庁に収められたのは1922年のことだ。李王家と日本の皇族の婚姻がなされ、朝鮮王朝の儀式や伝統を知る参考資料として使うという理由だった。

 1965年に韓日条約を締結した際、「韓日の文化財及び文化協力に関する協定」が結ばれ、約1300点の文化財が返還されたが、朝鮮王室儀軌は入っていなかった。

 韓国で返還運動が盛り上がったのは2006年、市民の自発的な運動がきっかけだった。そして昨年8月、韓国併合100年にあたっての菅首相談話で引き渡しが表明された。実現には、両国関係者の地道な運動と熱意があった。

 文化財は民族の歴史・文化・伝統を伝えるものであり、国民の誇りといってもいい存在だ。日本に流出した文化財は約6万点とも30万点ともいわれるが、いまだ実態はつかめていない。一方日本では、朝鮮総督府が所有していた対馬宗家文書などの自由な閲覧を求める声もある。

 今回の「返還」を契機に、韓日は流出文化財調査と相互活用について話し合いを進めてはどうだろうか。朝鮮王室儀軌は複写版が日本で製作され、閲覧できるようにするという。貴重な歴史資料を両国で有効活用できれば、相互理解にも役立つだろう。(L)