韓国で「利益共有制」が論議を呼んでいる。これは、「各企業が目標として掲げた利益と実現した利益の差である超過利益を中小企業支援に使う」というもので、大企業と中小企業の共生をめざして昨年末に発足した協力成長委員会の鄭雲燦(チョン・ウンチャン)委員長(前国務総理)が提唱した。現在、同制度の実現に向けて具体的プランを作成中というが、経済界から「市場原理に反する」と反発の声が聞かれ、賛否の論争が起こっている。どう見るべきだろうか。
利益共有制は、「一部の大企業の好況にもかかわらず、中小の納品企業は疎外され、年々縮小傾向にある」という認識から始まり、今年2月に導入検討が発表された。納品単価の引き上げや技術支援などを通じ中小企業の利益を高め、競争力を強めることが基本趣旨だ。だが、利益を直接分けるというのは市場経済ではあまり例がないだけに、論議が起こるのは当然ともいえる。そこで、土地公概念法制化と金融実名制の実施という過去の例を参考にしたい。
土地公概念は、1988年に法制化された。土地投機を根本的に解決するため宅地所有を制限するなど土地利用における公益性を重視したものだ。金融実名制は93年に「大統領緊急命令」として発表された。預金、株式、債権などすべての金融取引を自分の名前のみでする制度で、膨大なアングラマネーを締め出し、金融取引をガラス張りにするというものだった。この時も大論争が起こり、その後一部修正が加えられたが、結果は常習化した不動産投機や不明朗な金融取引是正に大いに貢献した。
韓国経済の現実を見る際、企業間格差がきわめて大きく、産業のすそ野が弱いことを忘れてはならない。最近の調査によると、全企業数に対する中小企業の比率は97・5%に達するが、売上高に対する比率は31・4%にすぎない。これは日本の47・9%(企業数比率は98・7%)よりはるかに低い。今回の利益共有制は、このような現実を改善しようとする一つの試みである。どんな実践プランとなるのか見守りたい。(S)