「公正な社会の実現を通じた先進一流国家建設」――これは李明博大統領が昨年の8・15慶祝辞で提唱、国家目標に掲げられている。李大統領は最近も「所得が増えても公正な社会にならなければ幸福な社会とはいえない」と述べ、「所得増大」への努力以上に「公正な社会」への取り組みを強調した。公正さを欠く統治は国民の同意を得ることはできるはずもなく、「公正な社会」への志向は正しい。だが、その実現には克服すべき課題が多いようだ。
「公正な社会」に求められるのは、不正や格差のない状態だが、韓国内から伝わってくる最近の一連の報道は全く逆である。収賄、企業との癒着、予算の流用、政府幹部の縁故採用といった不正が後を絶たない。釜山貯蓄銀行による7兆ウォンの不正融資はその代表例だ。監督すべき銀行監督院が不正に関係していたとして元院長をはじめ、OB、現職10人以上が取調べを受けているのだから、あきれてしまう。
一方、経済界ではサムスン系列会社で不正が発覚、李健熙(イ・ゴニ)会長が激怒するということもあった。かと思えば、大企業が莫大な資金力を背景に、不公正な競争を繰り広げ、ガソリンスタンドや飲食店、ベーカリーなどといった業界まで支配、中小・零細企業が没落している。
韓国は急速な成長で、国民所得は2万㌦に拡大したが、所得格差が近年拡大し、個人負債は1000兆ウォンを超える借金漬けの実態がある。さらに自殺者が1万5000人(09年)に増え、自殺率は31人で日本より高い。このような現状をみると、とても「公正な社会」とはいえない。
李大統領は最近、政府全部署の長・次官が参加した政策討論会で「国民はいま国全体が腐りきっていると感じている」と指摘、覚醒を促したが、抜本的対策を講じてほしい。不正腐敗を厳しく取り締まることは当然であり、累進課税の強化を通じた富の再分配や機会の均等へ向けた政策の強化も問われている。不正と格差がない社会は世界の目標でもある。「公正な社会」をスローガンで終わらせず、全力で実現させてほしい。(S)