韓国は小さい頃からほぼ全員が大学進学をめざす高学歴社会に変貌している。大学進学率は世界最高レベルの81・9%(09年)。日本の50%台より遥かに高い。大学新設も相次ぎ、4年制大学だけで200校を超える。誰もが大学に行く時代。これが今後どういう社会や国家を作り上げるのだろうか、考えてみたい。
ここに興味深いデータがある。ベネッセが数年前に実施した国際6都市調査によると、ソウルの小学生は、東京や北京、ワシントンDC、ロンドン、ヘルシンキなどと比べ平日の学習時間が最も長く、平均で145・8分に及ぶ。学習塾に通っている小学生は7割。学習意欲も高く、「一流の会社に入って一流の仕事につきたい」と上昇意欲も旺盛だ。その一方で「親の期待が大きすぎる」とプレッシャーを感じている小学生も少なくなかった。
いま韓国では少子化で一人っ子家庭が増え、親の教育にかける熱意は高まる一方だ。日本の俳優と比べ、韓流スターの多くが大学出であることも、このような韓国の社会風土を反映している。ヒョンビンは、親に反対された俳優になる条件が大学進学だった。クォン・サンウも高校3年間は無欠席で勉強に励んだ。
問題は大学は出ても就職できない状況が生まれている点で、これは単に景気の問題だけでもない。実際、中小企業の製造現場からは深刻な人手不足が叫ばれているが、大卒者は自分に見合う会社に入れるまでは就職浪人も厭わない。
振り返ってみれば、20年前でも韓国の大学進学率は30%台にすぎなかったが、少子化に歩調を合わせるかのように急上昇。就業者構造も、今年3月に初めて大卒就業者が高卒就業者数を上回った。変化のスピードがあまりにも急激であり、対応に遅れが出ていると思う。
高学歴化が今後も続くことは確実である。これは経済発展が生んだ成果でもあるが、何事も急速に進めば軋みも起こる。今後は高学歴社会に見合った産業政策が求められよう。そのためにも高付加価値型の産業構造に作り変えるべきではないか。(S)