米ニューヨークのホロコーストセンターで開催中の韓国人元従軍慰安婦展が、注目を集めている。同センターのアーサー・フルーグ所長は次のように語った。
「人間としての尊厳を侵害された点で、ホロコーストの犠牲者と元従軍慰安婦は同じであり、現在も尊厳の回復が求められている。被害者の証言を世界の若者たちに伝えることは、平和な社会を築く一歩になる」
被害者の人権を回復することは、歴史的課題だと訴えたものだ。
元従軍慰安婦が「基本権を侵害された」と提訴していた憲法訴訟で先日、韓国の憲法裁判所は「被害者が持つ賠償請求権は、人間としての尊厳と価値および身体の自由を回復するという意味を持つ。これに対する国の不作為は被害者らの基本権を侵害する」との憲法違反の判決を下した。そして「被害者は全員が高齢で、これ以上遅らせれば、歴史的正義を正して人間の尊厳と価値を回復することが、永遠に不可能になりかねない」と、救済の緊急性を強調した。
また韓国人被爆者による憲法訴訟審判でも、「重大な基本権侵害に直面した原爆被害者らの救済から目を背けることは、憲法に違反する」との判断を示した。
これまで戦後補償の個人請求権は、1965年の韓日条約で解決済みとされてきたが、その解釈をめぐっては論議が続いてきた。
憲法裁の判断を受けて韓国の外交通商部は、日本政府に対し、元従軍慰安婦に対する戦後補償問題についての公式協議を近く提案する。
日本では野田新政権が発足し、韓日関係も新たな構築が求められている。戦後補償問題や文化財返還問題などで協議が進めば、それは韓日の未来志向的関係にとっても資するのではないだろうか。
韓国憲法裁の訴える「歴史的正義、被害者の尊厳と自由の回復」という視点での協議進展を期待したい。(L)