ソウル、釜山など韓国各地で15日発生した大規模停電で、交差点の信号が消えたり、エレベーターに閉じ込められたりする大混乱が生じた。現代は何もかも電気に頼っている時代であり、いったん停電すれば都市機能は麻痺する。万全を期さなければならない電力需給・管理になぜ手抜かりがあったのか。
李明博大統領は大停電が起こった当日、自ら韓国電力本社に乗り込み、「基本を守ればこんな問題が起こるはずがない。お粗末な途上国のレベルだ」と激怒し、「徹底した対策」を指示した。担当部署の崔重卿(チェ・ジュンギョン)・知識経済部長官は、電力需要の予測を誤り、予告なしの断電措置をとったことを謝罪、責任をとる考えを示した。それだけ問題は深刻である。
韓国は電力の安定供給のため、予備電力を100万㌔㍗以上に設定しているが、当日はわずか24万㌔㍗(電力供給予備率0・36%)にまで落ち込み、韓国全土が一斉停電するブラックアウト寸前だった。電力需要が供給量を上回ると周波数が低下し、発電機は過負荷を防ぐため自動的に停止するようになっているが、この周波数の低下に気づいた時は、もう一刻の猶予もなく、地域ごとに供給をカットして乗り切るしかなかった。
最大の原因は需要予測を見誤った点にあるとされる。韓国は1997年の通貨危機以降の規制改革で発電と送電が分離され、非営利の電力取引所で電力が売買されている。その電力取引所の責任者が、「これまでも100万㌔㍗以下の状況があった」と国会答弁している。明らかに電力需給を安易に考えており、知識経済部でそれを管理できていない責任は重い。また、韓国では相対的に電力料金が安く、節約意識が薄くなっていたとも指摘されている。
今回の大規模停電で、03年8月にニューヨークなどを29時間真っ暗闇にし、5000万人に影響を与えた北米大停電が思い出されるが、ともかく原因を徹底究明し、再発防止の根本策を講じるべきだ。世界的に天変地異が多い昨今、人為的ミスは許されない。(S)