ここから本文です

2011/10/14

<鳳仙花>◆朝鮮陶磁の美を伝えた浅川兄弟◆

 朝鮮陶磁と木工を研究した浅川巧と兄の伯教の業績を再評価する動きが、今年の浅川巧生誕120周年を機に韓日両国で進んでいる。浅川兄弟と朝鮮民芸を紹介する美術展が日本各地で開催され、浅川巧を題材にした映画『道~白磁の人』の撮影も始まった。

 浅川兄弟とはどんな人達なのだろうか。決して知名度が高いとはいえない兄弟だが、残した足跡は大きい。その第一は朝鮮陶磁の美を世に知らしめたことだろう。山梨県生まれの二人は、植民地期に韓半島に渡り、朝鮮陶磁の美に感銘を受けた。伯教は「朝鮮陶磁には独自の美しさがあり民族固有の色を表現している。暖かき力と呼吸がある」と語り、巧は「陶工が規則を忘れて自由に手を伸ばして作ったものにのみ美しい作がある」と話した。朝鮮陶磁に作為的でない素朴な暖かさを見出した二人は、後に朝鮮民族美術館を設立する。

 巧はまた、韓国の民族衣装を着て歩き、韓国人と深い友情を結ぶ。韓国の貧しい子供たちのために私財を投じて学校に通わせた。一方、伯教は韓半島全土の窯場を回って、朝鮮陶磁の歴史を調べて書籍に著す貴重な仕事を成し遂げた。だが戦後、植民地時代の出来事が両国でタブー視されたため、その業績が広く伝わることはなかった。

 しかし、困難な時代でも韓日の友情を育んだその生き方に、親交のあった韓国人らは共鳴した。ソウル市忘憂里の共同墓地にある巧の墓碑に刻まれた「韓国の山と民芸を愛し、韓国人の心の中に生きた日本人、ここに韓国の土となる」がそれを物語っている。

 巡回展も撮影中の映画も、この浅川兄弟の思想と功績を伝えようとの思いで満ちている。特に映画は、韓国映画振興委員会が制作費支援を決定した。同委員会の日本映画への支援は初めてで、浅川巧の映画ならではだろう。巡回展は来年まで続き、映画も来年両国で公開される。浅川兄弟の果たした役割は、もっと評価されていい。(L)