年初に恒例の全米経済学会の基調講演で、米国のバブル崩壊を予言した著名な経済学者であるイエール大学のロバート・シラー教授が「善なる資本主義」をつくるため、ベネフィット企業を拡散するよう提唱した。ベネフィット企業とは福利企業とも訳されるが、利潤とともに社会寄与を同時に追求する企業のことをいう。昨今、米国では「強欲資本主義」に対する反発が強まり、この資本主義の病弊解消のため提唱されたものだ。二極化問題が深刻な韓国でも財閥企業に対する反発があり、ベネフィット企業という新しい流れは参考になりそうだ。
これまで企業は利潤追求を最優先にし、社会的責任のある行動に対して株主の攻撃にさらされることがあった。ベネフィット企業は、そのような株主の攻撃から法的に保護された営利企業のことであり、2010年に米メリーランド州で初めて法律による規定を設けた。ベネフィット企業になるには、企業の定款にどんな社会的寄与を遂行するのかを具体的に明示しなければならない。
米国以外でも、バングラデシュのグラミン銀行の例がある。最貧困層に奉仕すると同時に収益性を維持するマイクロ・ビジネスを実施し、同行のユヌス総裁がノーベル平和賞を受賞した。このような企業は消費者に尊敬の念を呼び起こし、利益だけを重視する企業よりも堅実に利益を維持できる持続可能性がある。
韓国でもそんな企業が力をつけてほしいが、最近、公正取引委員会により、サムスン電子とLG電子が洗濯機、薄型テレビなどの価格を談合で不当につり上げたことが摘発された。この2年で3回目の摘発だ。世界的企業になっても、国内ではこんな談合をやるとは恥ずかしい限りだ。
韓国で近年、中小企業との協力成長、非正規職の待遇改善、所得格差拡大などの解消に財閥企業が積極的に貢献すべきだという指摘がなされている。企業利益はもちろん大事だが、国家と社会、その構成員とともに成長することも大事だろう。ベネフィット企業のような世界の潮流に学ぶ必要がありそうだ。(S)