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2012/02/24

<鳳仙花>◆在日女性監督の快挙◆

 世界3大映画祭の一つに数えられる第62回ベルリン国際映画祭で、在日2世の梁英姫監督作品『かぞくのくに』がフォーラム部門アートシアター連盟賞を受賞したという、うれしいニュースが届いた。フォーラム部門は、新進映画作家の作品や革新的な作品を選んで上映するもので、時代を反映した世界の映画が、数多く上映されることで知られている。

 在日の家族をテーマにした映画が国際的な評価を受けたことは、在日の存在を世界にアピールするきっかけにもなる。

 受賞作品は、1959年12月から約20年間行われた北朝鮮への帰国事業によって北に渡った兄が、病気療養のため25年ぶりに日本に一時帰国し、彼を迎える妹ら家族の姿を描いた作品だ。

 国家によって引き裂かれ、価値観の違う社会に生きるゆえに考え方のすれ違いが生じる。しかし、それでも変わらぬ「家族の絆」とは何か、その普遍的な問いかけが高く評価された。

 梁監督はこれまで、北朝鮮に忠誠を誓う父、北に渡った兄を親族訪問で訪ねた経験などを、10年以上にわたって記録し、『ディア・ピョンヤン』『愛しきソナ』というドキュメンタリー映画として発表してきた。06年には同映画祭フォーラム部門の最優秀アジア映画賞を、『ディア・ピョンヤン』で受賞している。今回が2度目の受賞だ。同じ国家分断を経験したドイツの映画祭だからこそ、家族離散という問題を、より真摯に受け止めたのかも知れない。

 兄の日本への一時帰国は、現実的にはあり得ない話である。それどころか梁監督は現在、北への入国が不許可で、兄やその家族と会うことができない状況にある。家族の離散は現在進行形の話なのである。

 映画は今夏、韓日で公開が予定されている。分断を乗り越えて生きる家族の強い絆、思いとは何か、考えさせられることだろう。(L)