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2012/03/02

<鳳仙花>◆病める韓国社会―克服の道◆

 韓国でうつ病患者が増えているという。昨年1年間に130万人がうつ病にかかり、パニック障害などの不安障害を経験した人も245万人に上ったとされる。「うつ病大国」といっていい恐るべき数字だ。韓国社会は豊かになったはずなのに、何が不安へと駆り立てているのだろうか。

 うつ病の原因として、次のようなことが指摘されている。①貧富の格差拡大による相対的な剥奪感②激しい競争によるストレス③家族の解体④老後の不安などだ。特に、女性のうつ病患者は、毎月の所得が200万ウォン以下の低所得層が、300万ウォン以上の人たちに比べ3倍も多いという。

 うつ病だけでなく、自殺者も急増している。一昨年、自殺によって死亡した人は1万5556人に上り、10年前に比べ2・4倍も増えている。人口10万人当たりの自殺者数は10年前の13・6人から31・2人に増え、OECD(経済協力開発機構)加盟国の中では最も多い。しかも昨年、成人の10万人が自殺を図ったというのだから問題は深刻だ。

 韓国はかつて貧しかったが、周りのみんなが貧しかった。だが、いまはかつてよりはるかに豊かになったはずだが、周りと比較し、相対的な貧困感が強い。いつの時代も社会の不条理があり、挫折感や虚脱感はつきものだが、近年はそれが極限にまで行きがちだ。それは職に就かないニートの急増にも表れており、20代で33万7000人に達している。韓国でかつて見られない現象だ。この背景には明らかに格差が拡大し、階層間に違和感が広がっていることがある。どうすれば、彼らに生きる力を与えることができるのだろうか。

 かつて、著名な経済学者ガルブレイス教授は名著「ゆたかな社会」で「貧困の除去を社会的・政治的な日程に強力に載せ、その中心に据えようではないか」と訴えたが、貧困の除去とともに、格差をできる限り是正することが重要だろう。韓国でいま福祉論争が活発化しているが、まずは格差是正のための政策的な努力を優先すべきではないか。(S)