東日本大震災では多くの外国人も被災し、犠牲者も出た。異国の地で彼らは何を思い、どう乗り切ったのか。その一端を知ることのできる貴重な冊子が発行され、静かな話題を集めている。
仙台国際日本語学校に通う韓国、中国、サウジアラビアなど6カ国の留学生40人が、震災体験を記録した文集「ワタシタチの3・11-留学生40名の作文集」だ。学校側と留学生らの手作りによる文集で、たどたどしい日本語表現もそのまま掲載しているため、逆に当時のようすがリアルに伝わってくる。
生まれて初めて地震を体験し、死の恐怖を感じたという中国人女性は、避難所で周囲の人々が支えてくれたことに心から感謝し、大学に進んだいまは、逆に避難所生活を続ける人の支えになりたいと願っている。韓国人留学生の文貞現さんは、被災後、仙台の韓国総領事館に駆け込んだ。そこで韓国放送局の取材チームに出会い、通訳として被災現場をまわる体験をした。
「陸前高田のある総合病院で会った病院の人たちが、水も電気もガスも何もない状態で、160人のとしよりやねたきりの患者のためにめんどうをみているすがたをみて、私はもちろん、取材していた記者やカメラマンもなみだめになった」場面は、いまも忘れられないという。
民族や国籍に関係なく助け合う人々の美しさ、生命の大切さが記されると同時に、一方で震災を前にした人々のエゴも記録されている。震災を客観的に見つめ直す上で、ぜひ一読してほしい文集だ。
震災後、帰国した留学生も多いが、一方で親の反対を押し切って日本に留まり、被災者への支援活動に携わる留学生も目立ったという。
文さんは、「人々はどんな状きょうでもきぼうをすてず、必死で立ちなおそうとしていました。人間だからこそおたがいにたすけあい、またたつことができる」と感じたと結んでいる。その思いを共有したい。(L)