韓国でベビーブーマー(1955~63年生まれ)の退職が始まっており、その規模は700万人を超える見通しだ。彼らにとって、人生の第2幕の幕開けだが、安定した収入源をもつのは一部にすぎず、今後大きな社会問題になると心配する声が聞かれる。年齢的にも日本の団塊の世代に比べ5歳ほど若いが、再就職も容易でない。そんな中、ベビーブーマーの帰農現象が目立ち始めた。
農林水産食品部によると、昨年の帰農人口は、前年の4067世帯を大幅に上回る1万503世帯(2万3415人)に達した。10年前の880世帯に比べると、10倍以上の爆発的な増加だ。帰農者の中には30代や40代の中堅世代も多いが、ベビーブーム世代が中心をなす。生業として農業を行うためだけでなく、ゆとりのある生活や内面の幸福を求めて農村に移住する人も少なくない。これを「帰村」とも呼んでいるが、農村がベビーブーマーの受け皿になり、新たな活力となれば一石二鳥ではないか。
だが、農村に基盤のない都市民には不安があるのも事実で、政策的な後押しが必要だろう。その意味で、政府が最近、漢江、洛東江、錦江、栄山江の4大河川流域を中心に「帰農帰村事業」に着手したとのニュースに注目したい。政府が選定した民間事業者が4大河川流域の農村と連携して帰農教育プログラムを運営するというもので、政府が予算を支援するという。
ある分析によると、都市の人間1人が農村に行き30年暮らす場合、都市の交通と住宅難が解消され、インフラ費用の節約などで1億ウォン相当の生産性が高まり、農村も雇用機会の拡大、地域経済の活性化などで8000万ウォンの生産性の向上が期待できる。つまり都市から農村へのUターン現象が起きることは、都市にとっても農村にとってもプラスになるということだ。
韓国の農村も、若い人が都市にでていき、年老いた両親だけが残るという現象が続いている。ベビーブーマーが中心になって、農村を近代化させたセマウル運動のような新たな農村ルネッサンスを起こしてほしい。(S)