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2012/06/22

<鳳仙花>◆韓国の多文化共生政策◆

 韓国でロングラン上演中のミュージカル『パルレ』(洗濯の意)には、モンゴルからの出稼ぎ青年が、賃金未払いや民族差別を受けて苦悩する姿が出てくる。作・演出の秋民主さんが実際に見聞きした体験をもとに描いたもので、外国人労働者の置かれた厳しい現実の一端が伝わる。

 80年代半ばまで労働者の送り出し国だった韓国だが、経済成長に伴って、80年代末から外国人労働者の受け入れ国になった。現在、外国人労働者や韓国人と結婚した外国人など、在韓外国人は約120万人といわれる。韓国の人口が約5000万人だから2%を超える数字だ。

 外国人人口は今後も増える見込みだが、その急激な変化のためか、韓国社会は外国人との共生に時間がかかっているようだ。

 この10年、雇用許可制の導入、外国人処遇基本法や多文化家族支援法などを相次いで制定し、外国人の地方参政権や二重国籍も一部認められるようになった。しかし法制度が進む一方で、差別事件は後を絶たない。47歳の韓国人男性と結婚するため訪韓した20歳のベトナム人女性が、結婚8日目に殺された悲劇はほんの2年前のことだ。

 この事件を契機に、李明博大統領は多文化社会への取り組みを加速化させるようになった。多文化家庭(国際結婚家庭)の実態調査や支援制度も進み、昨年1月には兵役法も改正され、混血者の入隊が認められるようになった。

 その結果、日本人の母を持つ青年と、ベトナム人の母を持つ二人の青年が韓国軍の下士官となることが先日決まった。二人は10月にも下士官として入隊するというが、多文化社会を象徴する存在として頑張ってほしい。

 このように多文化家庭への支援が進む一方で、外国人労働者への偏見をなくし、支援する取り組みは遅れているとの指摘もある。外国人の人権を守り、社会統合を実現するため、より一層の取り組みを期待したい。(L)