受験や就職の過度な競争、リストラ、高齢者の孤独、生活苦など、韓国社会は子どもから高齢者まで多くのストレスにさらされている。韓国社会のストレス度の高さは、世界的にも知られるようになった。WHO(世界保健機関)調査によると、09年の韓国の自殺率は人口10万人当たり31・2人で、OECD(経済協力開発機構)加盟国で最も高く、世界全体で見ても2位という不名誉な数字だ(1位はリトアニアの34・1人)。
この問題に対処すべく、保健福祉部がメンタルヘルス対策として、来年から全国民を対象に精神疾患検診を実施すると発表した。全国民対象は世界初という。精神疾患とは深刻な問題だけに、取り組みを歓迎したい。
精神疾患検診は、小学生から高齢者まで年に数回、郵便で本人に質問事項を送って回答を受ける形式で行い、症状が見られる回答者には、専門家のカウンセリングなどを受けるよう通知するという。
だが、精神健康状態を明らかにすることを本人が隠す可能性や、資料が流出・悪用されて就職や進学、昇進に悪影響を与える可能性などが指摘されている。最低限、個人情報保護を徹底してほしいと願う。
保健福祉部によると、韓国では現在、18歳以上の14・4%が精神疾患を抱え、そのうちの約8割が自殺を考えているという。相談や治療を受けたケースは15・3%にすぎないとされる。なぜこれほど多くの人が病んでいるのか、考えざるを得ない。
「漢江の奇跡」と呼ばれた経済成長を果たし、昨年末には世界9番目の貿易1兆㌦を達成した韓国だが、その急発展を成し遂げるため、国全体が競争社会になりすぎたのかもしれない。
メンタルヘルス対策と並行して、福祉政策の充実、一度失敗しても再挑戦できる社会、経済重視からの価値観の転換など、ストレスの少ない社会を作る取り組みにも力を入れてほしい。(L)