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2012/07/20

<鳳仙花>◆「つかこうへい」の遺志継ぐ弟子達◆

 『熱海殺人事件』『蒲田行進曲』など数多くの名作を残した在日2世の劇作家つかこうへい(本名・金峰雄)が、2010年7月10日に肺がんで亡くなってから三回忌を迎えた。

 つかこうへいは慶應義塾大学在学中から劇作家・演出家として活動し、70年代から80年代にかけて一大つかブームを起こした。つか作品に出演することは、役者の登竜門でもあったという。また『熱海殺人事件』韓国公演や、東京都北区や大分県大分市と協力して劇団を結成し、地域からの文化発信に尽力するなど、多方面で活動した。亡くなった時はまだ62歳、新たな企画を推進中の無念の死だった。

 つかの死去で活動が頓挫するかと思われたが、その志がいま、多くの弟子たちに受け継がれようとしている。

 先日、北区つかこうへい劇団のメンバーで新結成した北区AKT(アクト)ステージが旗揚げ公演を行い、『広島に原爆を落とす日』を上演した。AKTは「アフター・こうへい・つか」の頭文字だ。

 つかの直弟子だったAKTステージの逸見輝羊代表は、「つかさんは常に弱者の立場で人間の本質を見ていた。在日2世だからこそ、国籍を超えた人間の愛とやさしさを伝えたかったのではないか。『口立て』という常にせりふを変更する独特の演出も、役者の力を大きく引き出した。それらを次世代に伝えたい」と話す。同じくつかの代表作『新・幕末純情伝』を再演中の演出家、岡村俊一さんは、「つか作品は戯曲の形をした『哲学』だ。上演を続けることでつか作品が生き続ける」としている。

 在日という出自を持つからこそ、つかは差別の醜さと人間の本質を見抜き、演劇を「哲学」にまで昇華させ、いまも輝きを放つのだろう。

 韓国でも、日本演劇界発展と韓日交流に尽力したつかの功績が、再評価されているという。今後も両国で作品が上演され、そのメッセージを伝え続けてほしい。(L)